蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



「あなたも分かっていると思うけど、慧は普通の男じゃないの。あの頭脳、美貌、性格……。全てが一級よ」

「……っ……」

「そんな彼に相応しいのは、どんな女なのか。もちろん私だって完璧に釣り合うとは思ってないわ。だけどね……」


沙耶はそこで一旦言葉を止め、絢乃を見た。

その目によぎる真剣な光が、絢乃の心を正面から射抜く。


「――――あなた、慧に一生お守りをさせるつもりなの?」


沙耶の言葉に絢乃は立ち尽くした。


……それは、絢乃の心の奥にずっとあった負い目だった。


沙耶は二人の関係の全てを知っているわけではない。

が、生来の頭の良さで二人の関係の底にあるものを悟ったのだろう。

何も言えない絢乃に、沙耶は畳み掛けるように言う。



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