蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
「私なら慧を助けてあげられる。慧の歩む道を、将来を支えてあげられる。……でも、あなたに何ができるの?」
「……それ、は……」
「私なら、慧のためにより良い子供を残してあげることもできる。……知ってるでしょう? 遺伝子は近ければ近いほど劣性になるのよ」
「……っ……」
「あなたは慧の従妹でしょう? 従妹とでは、いい子供を残すことはできないわ。せっかくの慧の遺伝子を、あなたは汚すことになるのよ?」
それは、決定的な一言だった。
――――子供。
絢乃の目の前が真っ暗になっていく。
劣性遺伝子については絢乃も生物の授業で習ったことがある。
けれどずっと、そのことを考えないようにしてきた。
考えたら、足元を掬われて氷の海に突き落とされる……そんな気がした。