蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
慧は変更届にさらさらっと記入し、カウンターにいた係員に渡す。
電話番号は変わらないが、絢乃の携帯の名義が慧に変わることによって基本料金が半額になる。
それに加えて家族間の通話であれば無料になるため、月々の料金はこれまでに比べてぐっと安くなる……はずだ。
手続きを終えた二人は携帯ショップを出、不忍池方面へと歩き出した。
慧が絢乃の手を取り、強く握りしめる。
「人が多いから、はぐれないようにね?」
「……うん」
繋いだ手から慧の温かな気持ちが流れ込む。
絢乃は俯き、慧に続いて歩き出した。
――――あの事実を知ってから、一週間。
絢乃はまだ混迷の中にいた。
入籍した矢先に知ってしまった、あの事実……。
世間的には普通の夫婦だと、他の夫婦と何ら変わらないと思い込もうとしても、あのことがどうしても頭から離れない。
絢乃は慧の手をきゅっと握り、震える声で言った。