蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
『私なら、慧のためにより良い子供を残してあげることもできる』
絢乃はぐっと手を握りしめた。
その目尻に涙が滲む。
どうして……。
どうして、慧の子供を残せるのが自分ではないのだろう……。
どうして、自分は妹なのだろう……。
慧に一番近い所にいるのに、それを許された立場なのに……。
どうしてこの世でただ一人、自分は慧の子供を残すことができないのだろう……。
「……うっ、……く……」
沙耶の言っていることは絢乃も理解している。
客観的に見て、絢乃も慧の遺伝子はこの世に残すべきだと思う。
しかし、その相手となる資格が自分にはない。
――――自分が、血を分けた妹だからだ。
『人の倫に反する』ということの意味……。
絢乃は今、その意味を心の底から理解していた。
子を残すのは人の本能だ。
だが自分達は、その本能を満たすことができないのだ……。