蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
絢乃は先ほどの沙耶の姿を思い出した。
美しい顔、完璧なプロポーション……。
慧は今は自分を愛してくれている。
しかし子供が産めない自分が慧の一生を独占することが、本当に慧のためになるのだろうか?
慧はあれから絢乃を一度も抱いていない。
もちろん絢乃も慧が自分を気遣ってそうしてくれていることは分かっている。
けれど慧も健全な一人の男性だ。
新婚なのに体の関係を拒否している自分を、慧はどう思っているのだろうか?
慧は昔、沙耶と付き合っていた。
あの綺麗な人を抱いていたのだ。
それに比べて自分は不感症だった上、今は体を開くことすらできない。
慧が自分を抱かないのは、ひょっとして……。
『おれはもう、戻らないよ。……お前のお守りをすることに、もう飽きたんだ』
絢乃はこくりと息を飲んだ。
なぜかあの時の慧の言葉が脳裏をよぎる。
あれは慧の本心ではなかったと、絢乃も今は理解している。
けれどあの言葉が、脳裏から離れない……。