蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
慧と絢乃は従兄妹という関係だ。
しかし血が近くても、劣性遺伝子だけが確実に出るという訳ではない。
その血脈の遺伝子上の特徴が出やすくなるというだけだ。
それは優性だったり劣性だったり、時と場合によるが、そもそも「優性」「劣性」というのはあくまで遺伝子の区分けにすぎず、それがイコール身体的特徴になるわけでもない。
近親婚による影響は、それを何代か繰り返した場合にのみ現れてくる。
ヨーロッパの某王室で虚弱児もしくは天才児が生まれる確率が異様に高く、普通の子が生まれる確率が低かったのは近親婚によるものだ。
中世や近世のヨーロッパで教会が近親婚を禁じたのは、こうした理由による。
しかし、一代限りの近親婚なら子供に異常が出る確率はほとんどない。
慧はこのことを知った上で彼女と結婚したはずだ。
けれど彼女はそのことを知らず、『血が近いと奇形が生まれる』という一般的イメージしか頭にないのだろう。
慧がなぜこのことを彼女に話してないのかわからないが、これはある意味チャンスともいえる。
彼女を揺さぶるなら、早い方がいい。
「……さて次は、どうしようかしらね……」
こういう時は自分の頭の良さが有難い。
沙耶はくすりと笑い、手元のバッグから手帳を取り出した……。
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