蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
3.千人で仙人?
二時間後。
車は研修施設に到着し、絢乃と卓海は研修会場へと向かった。
中には20人ほどの新入社員がおり、各自の前に新しいノートパソコンが置かれている。
席に付いていた新入社員達は、会場に入った卓海の姿を見るなり驚いたように目を丸くした。
卓海は皆の視線を当たり前のように余裕の表情で受け止め、にこりと笑う。
「情報システム部開発課課長の加納です。今日の午後から明日の午後まで、皆さんに社内システムの基礎をレクチャーします。どうぞよろしく」
猫被りの笑みに、女性社員達はぽーっとした表情で卓海を見つめる。
また餌食になる子が増えそうだな……、と思いながら絢乃は持ってきた資料を新入社員達の机に配った。
その中には情報システム部に配属になった藤田麻衣と半田章吾の姿もある。
絢乃が資料を配ると、半田は小声で言った。
「……ありがとうございます、絢乃さん」
「頑張ってね、半田くん」
絢乃は短く言い、卓海の隣へと戻った。
沙耶と慧のことで頭はいっぱいだが、仕事は仕事だ。
絢乃は内心でため息をつき、プロジェクターの準備に取り掛かった……。