蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
「ねえ、慧兄……」
「ん?」
「お父さんは来れないって……本当?」
不安げに言った絢乃に、慧は足を止めた。
しばし絢乃の顔を見つめた後、そっと手を引いて繁華街の脇の路地に入る。
慧は絢乃に向き直り、いつもと同じ穏やかな瞳で頷いた。
「ああ。父さんは来ない」
「でも父さんは、私達のことを……」
言いながら絢乃は俯いた。
父だけはあの事実を知っているのだ。
もし父の口から母や祖母にあの事実が知れたら……。
肩を震わせる絢乃に、慧は目を細めて笑った。
そっと手を伸ばし、絢乃の頬を包み込む。
「大丈夫だよ。父さんには、おれから口止めしてあるから」
「えっ……」