蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
麻衣は爛々と目を輝かせて卓海を見る。
その目は半田と同じく、酒のせいかどことなく熱っぽい。
この子もこの猫被りの鬼にやられたなと思った絢乃の前で、麻衣は突然爆弾発言をした。
「課長は百人切りって聞いたんですけどー。それって本当ですかぁ?」
絢乃は思わずビールを吹き出しそうになってしまった。
……百人切りって。
この場では絢乃しか知らないことだが、卓海は女嫌いだ。
単純に考えて、この鬼がそんな面倒臭いことを百回も繰り返すはずがない。
しかしその爆弾はあっという間に爆発した。
周りにいた男子社員たちがやんやと騒ぎ始める。
「加納課長のルックスなら百人じゃなくって千人でもいけますよね!」
「マジ羨ましいっすよ~。その半分でもいいからオレにください!」
男子社員達が一斉に言い募る。
絢乃は半ば呆れながらその様子を眺めていた。
……千人って……。
一日一人相手しても三年はかかる計算だ。
そんなことを三年も続けたらいずれ仙人になるだろう。
などとかなりどうでもいいことを真面目に考えてしまった絢乃のポケットで、携帯がブルッと鳴る。
絢乃は携帯を取り出し、通話ボタンを押した。