蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
「出ろ」
「……え、いいんですか?」
「その着信音は会社だ。オレは手が離せない、お前が出ろ」
卓海の言葉に、絢乃は慌てて携帯を開いた。
通話ボタンを押し、耳に当てる。
やがて絢乃の耳に聞き覚えのある声が響いた。
『あっ、課長ですか? 橋本ですが……』
「秋月です。課長は運転中で手が離せないので……」
『そうですか、では伝言をお願いしていいですか? ……さきほど物流システムに障害が発生したとセンターから連絡がありまして。それで……』
いつも落ち着いている橋本さんの声が緊張のせいか上ずっている。
絢乃はすぐにバッグから手帳を取り出し、話の内容をメモした。