蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



慧は自室のベットをちらりと見た。

昨日も、そして恐らく今日も、絢乃があのベッドに戻ってくることはない……。

そう思うと胸が鉛のように重くなる。


二人は結婚してからずっと、夜は同じベッドで過ごしてきた。

ここしばらくは体を重ねていないが、どんなに辛くても、慧にはもう絢乃と離れて夜を過ごすことなど考えられない。

それは不安もあるのかもしれない。

――――絢乃の心を全て得たわけではないという、不安。

いつか絢乃がこの手をすり抜けて消えてしまうのではないかという、不安……。


肉体の辛さは我慢できる。

けれど絢乃を失うことだけは、耐えられない……。


どうやって独りで生きてきたのか、どうやって独りの夜を耐えてきたのか……。

思い出せない自分が恐ろしい。


慧は重いため息をつき、携帯を見た。

画面には絢乃からのメールが並んでいる。


慧は昨日、絢乃に電話した時のことを思い出した。

『絢乃さん』と呼ぶ男の声、そして卓海の声……。

絢乃の隣に卓海がいると思うと、胸が掻き毟られるような気がする。


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