蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



20分後。

タクシーはとあるマンションの前で止まった。

沙耶に引きずられるようにタクシーを下ろされ、そのままエントランスへと向かう。


マンションはさほど大きくはないが、エントランスの内装を見る限りかなり高級な感じだ。

掃除も手入れも行き届き、奥の方には管理人の姿が見える。

まさに芸能人が隠れ住むマンションといった感じだ。


絢乃は沙耶に連れられ、5階の端部屋に入った。

中に入るとすぐに広いリビングがあり、ガラス窓の向うには都内の景色が広がっている。

綺麗に掃除されたフローリングの上には白い革張りのソファー、鏡面仕上げの黒いチェストなどが並んでおり、洗練された雰囲気が漂っている。

リビングの横にある洗面所もキッチンも広々としており、スタイリッシュな雑貨類が並んでいる。

まさに『女優が住む部屋』という感じだ。


息を呑む絢乃を、沙耶は奥の寝室へと連れて行った。

どんと突き飛ばすように中に入れた後、絢乃のバッグを取り上げ、出口を塞ぐように戸口に立つ。

目を見開いた絢乃に、沙耶は唇の端に歪んだ笑みを浮かべて言った。


「……ここはね、私と慧がいつも使っていた部屋よ」

「――――っ!」


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