蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
その言葉に絢乃は一瞬で凍りついた。
青ざめた絢乃に、沙耶は追い打ちをかけるように言う。
「慧って、ベッドの中だととても情熱的よね? ……慧はここに来ると、朝まで私を離すことはなかったわ。それこそ狂ったように抱き合ったわ、夜が明けるまで何十回もね」
「……っ!」
「慧の寝顔って、無防備でつい引き込まれそうになるのよね……。あなたもわかるでしょ? 慧の『奥様』?」
沙耶は口元に手を当て、くすくす笑いながら言う。
『私はあなた以上に愛されていたのよ』と言外に告げる、余裕の笑み――――。
絢乃は微動だに出来ず立ち尽くしていた。
喉の奥が痙攣し、声が出ない。
そんな絢乃を一瞥し、沙耶は言った。
「私、これから出かけなければならないの。帰ってきたらまたお話ししましょ?」
言い、沙耶はくるりと踵を返した。
立ち尽くす絢乃の視線の先でドアがバタンと閉じ、扉の向こう側から鍵を掛けられる。
そのガチャという音に、絢乃ははっと我に返った。