蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



沙耶はコートのポケットから例の写真を取り出した。

絢乃と卓海が並んで映っているその写真は、知り合いに頼んで撮らせて加工したものだ。

『慧はそんなものでは騙されない』と絢乃は言っていたが……。


『疑い』は現実に近い虚構の場合、最も強くなるものだ。

例えばこれが卓海ではなく楠瀬なら、慧はすぐに信憑性を疑うだろう。

しかし相手が自分の友人となれば、『ありえないことではない』と思うはずだ。


慧を騙すには生半可な方法では駄目だ。

知恵を絞り、最も効果的な方法を考えねばならない。


沙耶は絢乃の携帯をテーブルの上に放り、続いて手帳を取り出した。

パラパラとめくり、筆跡をチェックする。

絢乃の字はどの字も均等な大きさで、昔のひらがなのタイプライターみたいな感じだ。

理系で几帳面な性格がその字に現れている。


「………………」


沙耶はリビングに置かれたチェストの引き出しから一枚の紙を取り出した。

緑色の枠に囲まれたそれは……。


「……離婚届、ね……」


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