蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
沙耶は自嘲するように笑いながら、テーブルの上のボールペンを手に取った。
絢乃の筆跡を真似て『妻』の欄に絢乃の名前を書いていく。
その後、絢乃の財布から運転免許証を取り出して住所を書いていく。
人生で初めて書くのが婚姻届ではなく、他人の離婚届になるとは……。
皮肉と言えば皮肉だが、これも仕方のないことだ。
一通り書き終わったところで、沙耶は書類を郵送用の茶封筒に入れた。
あとは……。
沙耶は胸ポケットから自分の携帯を取り出した。
とあるアドレスを表示し、通話ボタンを押す。
「……あぁ、私だけど。引き続き、秋月絢乃の調査をお願いしたいわ」
鈴が転がる様な声がリビングに響く。
やがてリビングに、ゆっくりと夕闇が広がり始めた……。
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