【短】『さよなら』と言えたら、苦しくないのに。
お兄ちゃんは、ずっと何も変わらなかった。

あたしに優しい、カッコイイお兄ちゃんのまま。


変わったのは、あたしだったの。


お兄ちゃんの傍にいること、辛くて。

不自然にお兄ちゃんのこと、避けたりした。


あの時は、ごめんね……

きっと、いっぱい困らせて、いっぱい傷つけたよね?


でも近くにいたら、気持ち、伝わりそうで。

あたし、隠すのに必死だったから。


お兄ちゃんから、離れることしかできなかったの。



ねぇ、お兄ちゃん。


色んなことがあったよね。

いっぱい思い出もある。


そのどれもが、あたしにとっては宝物だよ。



二人で撮ったプリクラね、実は誰にもあげないで、今でも持ってる。


『兄妹』って書いた、お兄ちゃんのラクガキの文字さえなかったら。

あたし達、まるでカップルみたいに見えたかな……?



家族で海に行ったとき。

お兄ちゃんが見つけて、あたしにくれた2枚の櫻貝。


本当に嬉しくて嬉しくて。

机の引き出しに、大切にしまってあるよ。

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