【短】『さよなら』と言えたら、苦しくないのに。
ななが、俺に特別な想いを抱いているということ。

それは家族に抱く愛情なんかじゃないこと。


俺は、随分前から気が付いていた。


ななの視線を、いつも感じていたから。


だけど、それを流しては、兄として接して。

気持ちを知っていたからこそ、わざと突き放したこともある。



なぁ、なな。


俺は今まで、どれだけお前を傷つけてきたんだろう?

お前は、一体どれだけの夜を泣いて過ごしてきた?


お前が声を押し殺して泣くようになったのは、俺のせいだよな。

必要以上に我慢することを覚えたのも。



ごめんな、なな。

そんな風に、お前を苦しめてばかりで。


泣かせてばかりで。



もしも……

なぁ、もしも俺がお前の兄じゃなかったら。


お前の想いごと、お前を受け止めてやれたのに。


そして。

この腕に抱きしめて、離さないのに。


お前が俺を特別に想うように。

俺もまた、お前を誰よりも特別に想っているんだ。

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