【短】『さよなら』と言えたら、苦しくないのに。
もしも、ななが望むなら――

俺は、お前をさらってどこへでも行ける。


だけどそんなことしても、お前は今以上に苦しむよな?

笑えなくなるよな?


だから。

俺の想いは、このまま俺だけの胸に収めておくよ。


気付かなくていい。

罪も罰も、背負うものがあるなら、全部俺が引き受けるから。



なぁ、なな。


幸せになれよ。

お前が幸せになることが、俺の一番の幸せだから。




「お兄ちゃんと結婚する」

そう言っていた、小さい頃の君。


月日は流れ、それが叶わないと知った。


それでも、こんな俺を想い続けてくれた。

誰よりも愛おしく想う。


苦しんだ分だけ、笑ってほしい。

傷付いた分だけ、幸せになってほしい。


大切な、大切な妹。


「さよなら」と今は言えないけれど、いつかこの言葉を言えるように。

そして、誰よりも幸せになれるように。


ずっと、ずっと願っているよ。



―――完―――

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