【短】『さよなら』と言えたら、苦しくないのに。
 ※ ※ ※ ※ ※ 


小学生の頃。

同じクラスの男の子に、いじめられていたあたし。


泣きながら、家に帰ったことがあった。


お兄ちゃんは、そんなあたしを見て、


「誰に泣かされたっ!?」


そう言って、すごく心配してくれた。



次の日の朝。

あたしのクラスまで、あたしと一緒に行って。


「俺の妹いじめたヤツは誰だ?」


本気で、怒ってくれたの。



あの日から、あたしはいじめられなくなった。


頭を叩かれることも、スカートをめくられることも。

あの日から、全部なくなったの。


お兄ちゃんが、助けてくれたんだ。


すごく嬉しかったよ。


お兄ちゃんが心配してくれるんなら、もっといじめられてもいい――なんて。

そんな風に思うくらい、嬉しかった。



ねぇ、お兄ちゃん。


お兄ちゃんは、あの日から、あたしのヒーローになったんだよ。



――あたしだけの、ヒーロー……


 ※ ※ ※ ※ ※

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