エリート外科医の甘い独占愛
0.壊れたプロポーズ
冷たい雨の降る夜だった。
30歳の誕生日まで残り10日をきったある日、私は恋人である広岡卓志と一緒に夜景の一望できるホテルの一室にいた。
窓辺でワインを飲み、他愛のない話に声を上げて笑い、何度も甘いキスを繰り返す。
それは、私にとってとても幸せで、大切な時間。
「なあ、汐」
卓志は私の名前を呼んで、小さな箱をポケットから取り出した。
「なあに?」
「指輪だよ」
卓志は箱に掛けられたリボンをほどき、取り出したリングを私の左手の薬指にはめる。
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