エリート外科医の甘い独占愛
「ブーケトス、参加しなくてよかったんですか?」
隣にいた伊崎先生が私の問いかける。
「べつに欲しくなかったので」
私の棘のある返答に、伊崎先生は戸惑の表情を浮かべ「そうですか」と言った。
気まずい沈黙が流れたその時、ワーッと歓声が上がった。
誰がリクエストしたのか、卓志が花嫁にキスをして、軽やかに抱き上げた。
マリアベールが緩やかにながれ、日の光に透けてキラキラと輝いて見えた。
「きれいです」
「……そうですね」
「あ、いえ、今日の野島さんが。白衣姿よりとても魅力的です」
「私が?」
何を言っているのかと怪訝そうに見上げると、伊崎先生は突然私の髪を撫でた。
「触らないでください」
ビクリと肩を震わせて声を上げると、先生は申し訳なさそうに言った。
「すみません、ここに花びらがついていたので気になって」
そういわれて自分で確かめると、結い上げた髪の間に、バラの花びらが1枚挟まっていた。
「あ、ああ。ライスシャワーの時のですね」
触られると思ったなんて、自意識過剰にもほどがある。
そう思った自分が可笑しくて、つい笑ってしまった。