エリート外科医の甘い独占愛
「伊崎先生、私はもう大丈夫ですから行ってください」
「でも」
「だってほら、先生達余興の準備もあるじゃないですか」
私がそう言うと伊崎先生はハッとしたように立ち上がった。
「そうでした、野島さん、僕先に行きます」
「はい、頑張ってくださいね」
私は一人取り残されたラウンジで、扉から漏れ聞こえる曲を口ずさんだ。
卓志の部屋でよく一緒に聴いていた、去年ヒットした海外の女性シンガーの代表曲。
大好きだったラブソングをこんな場所で聞くことになるなんて。
「……帰ろう」
私はクロークでジャケットを受け取ると、式場を後にした。