エリート外科医の甘い独占愛
「実は、汐の誕生日に俺、結納の予定なんだ」
「ゆい、のう?」
「ああ」
卓志は申し訳なさそうに長いまつげを伏せると、
「実家の病院が経営難でね。資金援助のために縁談を受けた。世間でいう政略結婚ってやつなんだろうな」
そう言いながら、自嘲気味に笑った。
「……なにが、可笑しいの?」
どうして笑うの?笑っていられるの?怒りとも悲しみとも分からない感情が溢れ出して止まらなくなる。
涙で滲んだ卓志の顔が醜く歪んで見えて、私は震える手を握りしめ、卓志の胸元を何度も叩いた。
「酷いよ、卓志、ひどい……私は?私はどうなるの?」
どうせなら、こんな卓志の事なんて嫌いになってしまいたかった。
なのに卓志は、
「……汐、ねえ、聞いて汐。俺が愛してるのは君だけだよ」
泣き崩れる私をしっかりと抱きしめて、何度も、何度も、永遠に私だけを愛しているといったんだ。