エリート外科医の甘い独占愛

そんな私を主任が手招きをして呼び寄せる。

「野島さん、処置室の重病人にこの点滴してあげてくれる?」

私は苦笑いする主任から、患者名すら書かれていない点滴を手受け取った。

「はい、処置室ですね」

事情が呑み込めないまま私は処置室へ向かいドアをノックした。

「失礼します」

中に入ると、そこに横たわっていたのは伊崎先生だった。

「え、伊崎先生」

「……あ、野島さん」

伊崎先生の声が、かすれている。

そして戸惑うその顔が紅潮しているのは、きっと熱があるからだ。

どうしたんですか――そう聞かなくてもわかる。

昨日濡れて帰ったりしたから、体調を崩したにちがいない。


< 35 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop