エリート外科医の甘い独占愛
そんな私を主任が手招きをして呼び寄せる。
「野島さん、処置室の重病人にこの点滴してあげてくれる?」
私は苦笑いする主任から、患者名すら書かれていない点滴を手受け取った。
「はい、処置室ですね」
事情が呑み込めないまま私は処置室へ向かいドアをノックした。
「失礼します」
中に入ると、そこに横たわっていたのは伊崎先生だった。
「え、伊崎先生」
「……あ、野島さん」
伊崎先生の声が、かすれている。
そして戸惑うその顔が紅潮しているのは、きっと熱があるからだ。
どうしたんですか――そう聞かなくてもわかる。
昨日濡れて帰ったりしたから、体調を崩したにちがいない。