エリート外科医の甘い独占愛

優しく背中をさする卓志の大きな手を見つめながら、ジンジンと痛む頬にそっと手の平を当てる。

卓志は彼女を抱き締めたまま、私に視線を移した。

その瞳は、『大丈夫か、まずいことになったな』そう言っている。

私も、『どうすればいい?』

そういう思いを込めて卓志を見つめ返した。

その瞬間ピクリと体を波打たせた彼女は、卓志から体を離すと私に顔を向けた。

こんな時の女の感覚は、とても鋭いのだと思う。

アイコンタクトですら、敏感に感じてしまうんだ、きっと。

だから、どんな嘘をついたら彼女を納得させられるかなんてわからない。


「ねえ、卓くん。どういうことか説明して!」


彼女の声が大きく響いた瞬間、同じフロアーの部屋のドアがゆっくりと開いた。




< 44 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop