エリート外科医の甘い独占愛
「野島さん、立てますか?」
伊崎先生は私の腕を掴んで立ち上がらせるとこう先生は言った。
「とりあえず上がってください」
「いえ、私、帰ります。助けてくださって、ありがとうございました」
よろよろと後ろを向き、ドアノブに手を掛けた。
「だめです」
伊崎先生はそう言うと、私の肩を掴んだ。
「野島さん、ごめんなさい。立ち聞きしたわけじゃないけど、さっきの会話は全部聞こえてしまった。真実を問うつもりはありませんが、今すぐには帰せません」
「どうしてですか!?」
「どうしてって……今帰ったらせっかくの嘘が台無しになる。2人はまだ、あの場にいるかもしれない。君は僕に会いに来たことになっている。だから、ほんの数分で帰るのは変じゃないですか?」
そこまで言われてハッとした。
おそらく、今の私は冷静な判断が出来ていない。
伊崎先生の言う通り、今はまだ、ここを出て行かない方がいい。