エリート外科医の甘い独占愛

「野島さん、立てますか?」

伊崎先生は私の腕を掴んで立ち上がらせるとこう先生は言った。

「とりあえず上がってください」

「いえ、私、帰ります。助けてくださって、ありがとうございました」

よろよろと後ろを向き、ドアノブに手を掛けた。

「だめです」

伊崎先生はそう言うと、私の肩を掴んだ。

「野島さん、ごめんなさい。立ち聞きしたわけじゃないけど、さっきの会話は全部聞こえてしまった。真実を問うつもりはありませんが、今すぐには帰せません」

「どうしてですか!?」

「どうしてって……今帰ったらせっかくの嘘が台無しになる。2人はまだ、あの場にいるかもしれない。君は僕に会いに来たことになっている。だから、ほんの数分で帰るのは変じゃないですか?」

そこまで言われてハッとした。

おそらく、今の私は冷静な判断が出来ていない。

伊崎先生の言う通り、今はまだ、ここを出て行かない方がいい。


< 47 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop