エリート外科医の甘い独占愛
「だから、どうぞ。散らかってますけど」
促されるまま、私はパンプスを脱いだ。
廊下の突き当たりがリビング。卓志の部屋と同じ間取りだからよくわかる。
でも、雰囲気も匂いも全く違った。
伊崎先生らしいシンプルな家具は整然と配置され、どこか殺風景な印象さえ感じる。
「いつから住んでいるんですか?」
「広岡先生が引っ越してくるだいぶ前からです」
伊崎先生はそう言うと、カウンターの向こうに歩いて行った。
「適当に座っててください。今、コーヒーでも入れますから」
私は言われたとおりにソファーに腰を下ろすと、携帯電話をバックから取り出した。
卓志からの着信はない。
何も言葉を交わさないままここに来てしまったことが、気がかりで仕方ない。
液晶画面を見つめながら、何度もため息を吐いた。