エリート外科医の甘い独占愛
「……卓志」
思わず名前を呼んでしまい、慌てて口を噤むと、卓志は迷惑そうに顔をしかめ、私から視線反らした。
重厚な木製の机の向こう側に座っている病院長は、私にもう少し近くに寄る様に言い、私が動くのを待っている。
でも、さっきから床に靴底が張り付いたみたいに全く動くことが出来ない。
「野島さん、早くしなさい」
後ろにいた看護部長に背中を押されると、よろめきながら前に進み、卓志の隣に並ぶような形になった。
院長は、ゴホンと咳払いし、一枚の紙を私たちの目の前に掲げた。
それはさっき、伊崎先生が破り捨てたコピー用紙と同じもののように思えた。