エリート外科医の甘い独占愛
おぼつかない足取りで廊下を進みながら、卓志の事を考える。
あんなふうに取り乱す彼を見たのは初めてだった。
まさか、院長を殴ったりなんて……そんな悪い考えばかりが浮かんでは消えた。
ざわつく気持ちは落ち着く気配はなかったけれど、私はどうすることも出来ないまま、ナースステーションに戻った。
「今、戻りました」
時計はすでに9時をまわっていて、もう日勤のスタッフが仕事を始めている。
私はこっちに歩いてきた後輩に声を掛けた。
「ごめんね。申し送り今からしてもいい?それと、あの……」
後輩は一瞬足を止めると、私とは目も合わせようとせずにナースステーションから出て行ってしまった。
「あの、待って」
追いかけようとした私の肩を掴んだのは、伊崎先生だった。