みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
これからはアフターだって時間を共にしてくれるなら、続きはそのトキで良いでしょう……?
* * *
「……あんた鬼ね」
ストローでグラス内のコーヒーをカラカラかき回しながら、私は呆れた声を出す。
これはテーブルを挟んだ向こう側で踏ん反り返るがごとく、優雅に足を組む皇人に対してのもの。
「言ったろ?――目には目をって」
「にしても…」
うわー、とんでもない喰わせ者だよ。ハハと苦笑をしたのち、私はストローに口をつけた。
肝心の婚約会見は、里村一族が経営するCK社の人事へと話が180度すり替わった。
しかも社長交代。表向きは皇人が後を継ぐという輝かしいものだが、内情はまるで違う。
彼は株主および役員連中を巻き込んで、父である社長を退陣に追い込んだのだ。