みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
その東条一族の分家!?名門家の出自って!?あの早水が!?――ありえねえええ!ていうか、早水の方が怖いんですけど!
「……余計なことまで」
「貴方も“一因”なんでね。これでフェアだろ?」
チッ、と今度は大きく舌打ちした早水。多分、これが彼の本性なのだろう。
世の中には不思議な巡り合わせや繋がりがある、と改めて感じてしまった。
「と、ところで!皇人はいずれは結婚するつもり?」
「どうだろな」
あれほど結婚を急かしていた両親を力でねじ伏せた彼に、もう口を出す人はいないだろう。
小さく笑って返す彼はやっぱり飄々としていて、その真意は今日も掴めなかった。
「いつか現れたらな。――オマエ等みたいに」
そう言って立ち上がった皇人は、私と早水を残してスイート・ルームをあとにした。
この言葉が本当のものとなる時、きっと女性にも容赦しないだろうと思わせる後ろ姿だった。
「さて、我々も行きましょうか」
「……その言葉遣い。今日くらいどうにかしてよ」
「フッ、じゃあ行くぞ。――まりか」
私の名を呼んで、手を差し出してくれる彼の手をキュッと掴んだ。