みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
愛されたといえば言葉は良い。身体の相性が良いのもよく分かっている。
それでも声が枯れるくらい啼かされて体のあちこちに痛みを負った状態を、なま易しい表現で済ますのは些か悔しいところだ。
ちなみに私といえば、彼がコンシェルジュにお願いしてくれた着替え諸々のお陰ですっぴんも堂々と披露している。
汗や涙でドロドロに溶けたメイクもオフ出来たし、シャワー後に着替えられて本当にホッとしたので構わない。
しかし、首に巻いたフェイスタオルを外せないままの現在。室内くらい楽にいたいのに、ワンピとカーデの下に不具合が生じているのは解せない。
それは何故ここまで?、という箇所が無数に紅く染まっているから。……キス魔の上にキスマーク魔な男のせいだ。
「朱祢の今のボスは違うだろ」
笑顔で正すように言われ、「ええ」と言葉少なく頷いた。――ここで勝負あり。
「ナチュラルでありたい」
「そうですね」
その言葉がジワリジワリと心をあたためる。頷いて同意したものの、「だからぁ」と不服そうな声が室内に響いた。