みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
勝手なより好みや偏見したり、第一印象だけで決めつけるのも悪いというのも確か。
だから、やっぱりとことん付き合ってみたくなるのが心情ってもの。
――とある男に会うまでは、私もそう思っていた……。
「杏奈(あんな)、こっちー!」
ガヤガヤと賑わしい混雑した店内を進む途中、聞き慣れたひと際大きな声が響いた。
店員さんの案内をそこで断り、浮腫んだ足を沈めていたハイヒールを脱いで上がる。
ボックス席のそこは掘りごたつ式で、だるい足を床暖房が温めてくれる最高の空間。
そんな六名が座れる半個室空間で、いつものメンバーこと、亜矢(あや)、ほのか、陽香(ようか)、祥子(さちこ)の4人が待っていた。
「ほんっとゴメン!」
スプリングコートを脱ぎながら詫びを入れる。とはいえ、視線はもうテーブルに置かれた料理に向かっていた。
「べつにー。大遅刻の食いしん坊のためにオーダー済みよ」
ショートヘアがよく似合う小顔の祥子のコレは出迎えの先制パンチ。売れっ子モデルは今日も舌好調のよう。
「ホントすぐ食べれて助かるー。あ、すいませーん!生中ひとつー!」
よく知る彼女のひと言なんてイチイチ気にする私じゃない。