みだりな逢瀬-それぞれの刹那-


フンっと鼻息荒くして煮え切らない男にそっぽを向くと、椅子ごと給湯室の方へ視線を移す。


「ばっかじゃない!?何で今ごろ後悔してんのよ!?――好きなら好きってちゃんと言え!」



「ああ、なるほど。――好きだ」


背中に届いた突拍子もない反応に、「はあ!?」と大声を上げて立ち上がった。


びっくりしながら振り返れば、音も立てずにいつの間にか目の前まで来ていた男と対峙する。


無機質な顔で言うものだから全くあたたかみが感じられず、この男には似合わないセリフだ。



「わ、私…、間宮さんじゃないんだけど。……忙しすぎてついにネジでも外れた?」


「バカじゃん!」と大笑いして、日頃の仕返しにイジり倒せるチャンスがついに到来したというのに。


いま私はなんで、こんなにも胸がチクチク痛んで仕方ないんだろう……?


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