みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
俺も大概マイペースだと思うが、その斜め上を行くのがこの真緒。
日本人の母譲りの長い黒髪がトレードマークの彼女とはイトコ同士だ。
「最近、John(ジョン)とはどう?」
「さあね。最近、ラボにべったりらしいわ。女じゃなくてラボがライバルよ」
ジョンとは真緒のボーイフレンド。シカゴに本社を置く大手の製造業、SJ社で主席研究員として働いている。
真緒の次に仕事を愛する真面目なヤツなんだが、集中しすぎて彼女を放っておくこと間々あり。
その苛立ちをコッチに向けられる身にもなって欲しいものだ……。
「俺が真緒に頼りっ放しだからなぁ」
「あら、影の支配者って呼んでくれる?」
フフッと笑ったところで、氷と水の入った銀製のバケツが到着した。
その正体はもちろん、喉を潤してくれる魅惑の美酒。彼女が白を頼み、ワインがそれぞれのグラスに注がれた。
「じゃあ、乾杯」
ワイングラスを掲げて言えば、ようやく機嫌の戻った真緒からフランクな笑みが返って来る。