みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
大学時代に立ち上げた会社――R・F・Aで、創業当時からずっと私設秘書を務めてくれている彼女。
今ではCEOなどと大層な役職を名乗っているが、昔は俺の実家の一画で数人のメンバーとスタートしたのは記憶に新しい。
あの頃があって今がある。――がむしゃらに奔走した時の失敗は未来への原動力だった。
近所に住んでいたひとりっ子同士の俺たちは、共働きの両親に代わってナニーにまとめて育てられた。
そんな経緯もあって、イトコというよりは本当の兄妹のように慕っている。
ウエイターが仰々しくお辞儀をして部屋を出ると、真緒はテーブルに肘を乗せて頬杖をつきはじめた。
「――アカネ情報なら無いわよ」
「嘘つけ」
「レイフはボスよ、って今日はアンタの誘いを断って戻ってくるなり言ったけど」
「それはそっけなさに惚れ直すね」
彼女のさすアカネとは、アカネ・マミヤという日本人女性のこと。
学生時代にコッチに留学に来ていた時に知り合ったらしい。