みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
アジア系特有のキュートさと美しさを備えた容姿。それでいて強気な性格のギャップに見事ヤラれたのがもう5ヶ月も前だ。
――事あるごとに、何故もっと早くアカネを紹介してくれなかったのかと言いたくなる。
日本へ戻って就職していた彼女がアメリカへ戻ってきたため、俺の私設秘書はどうかと誘いをかけた真緒には何も言えないが……。
「果たして、その顔とプッシュの強さでどうにかなるのかしら」
真緒がフフッと人の悪い笑みを見せる時、その向こうで隠しているものがある。……本人は気づいていないクセなんだろう。
「……何故教えない?」
ワイングラスをテーブルに置くと、つい真顔で聞いてしまう。
すると真緒はグラスを静かに掴み、ゆるやかに液体を回した。
そうしてグラス内のワインが、ゆらゆらと波立つように揺れるのを見つめている。
「――本気度が足りないのよ」
そう短く言い切り、グラスをテーブル上に置いた彼女をジッと見据えた。