みだりな逢瀬-それぞれの刹那-


このまま中立でいる方が安全だ。皇人のさっきの発言は少し警戒する必要があるけども……。



「皆さま、本日は――」

すると、中央に設けられた壇上よりマイクを通した声が場内に大きく響いた。


その声の主は皇人の父であり、私の叔父その人。彼は里村家に婿入りしていた。



「今宵、折角ですので愚息の婚約をご報告いたします。――まりかさん、さあこちらへ」

何の前触れもなく、その叔父が発したトンデモナイひと言は場内を静寂に包む。



当然、私もそのひとり。……何が起こった?まりかって珍しいな、同姓同名か?


……いやいや、何故か照明が消えて私にスポットライトが当てられてますけど?


一斉に向けられた視線に慄いているのは、たった今ご指名を受けたこの私だ。



「彼女は皆さまもご存じの通り、皇人のいとこですが、現在は自社でその辣腕を発揮しております」


開いた口が塞がらない。唖然としつつも、針のむしろとはまさにこのこと。


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