みだりな逢瀬-それぞれの刹那-


私を含めて家族や早水は吸わないから、ほろ苦い煙草の香りはやっぱり苦手だなと思ってしまう。



「まあ、あくまで俺の見解だけど……。
親父さんがいなくなって後ろ盾やもっと金が欲しいオマエの家と、いずれオマエんとことの合併を狙ってたぬきオヤジが企てたんじゃねぇの?」


煙草を咥えたまま口にした皇人の意見には納得。だからこそ、頭を抱えて盛大に溜め息を吐いた。


「あかねが高瀬川くんを理由に来てってうるさく言ってたのも、ぜんぶ婚約発表のためか!」

今ごろハッとしたのは遅いと思う。ただ、これで全ての辻褄が合った。


贅沢大好きな母娘と打算的な里村家の思惑が一致したのか。……身内ながらその強欲さには恐れ入る。


「招待状からまりかが欠席するのを知っていて、当日ギリまで黙ってたな」

「当たり前じゃん!そうだと知ってたら!」


「――知ってたら?」

「っ、」

そこでグッと言葉に詰まり、皇人の眼を避けるように視線を移す。



言える筈ない。……もし事前に知っていても結局、私は早水に依存していただろう。


「諦めんの?」


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