【短】桜の咲く頃。
「………なにしてんの」
そう言って私からハンカチを奪い取り、そっと私の目元を拭った。
「あの……ありがとう、ございます」
「ん」
その人はそのまま帰るのかと思いきや私の横に座った。
「あの……?」
「なに」
少し目線を動かしてそっけなく言われて、言葉に詰まった。
「あの……」
「だからなに」
「あの……隣…」
「俺が座っちゃダメなわけ?」
「いえ…」
勇気を振り絞って言ったのにバッサリ言われて、返す言葉がない。