【短】桜の咲く頃。



「……そっか」



彼はそれっきり黙ってしまい、こんなこと言うんじゃなかったと後悔した。



「泣きたい時は……泣けばいい」


「……え?」


「友達なら…俺がなってやる。だから泣きたい時は俺を呼べばいい」




そんな優しいことを言われて、私の涙腺は完全に崩壊した。




その涙を黙って拭い続けてくれる。



「…でも、私たちはお互い知らなくて……」



私の言葉に目を見開いたかと思うと、盛大なため息をつかれた。




「……水無月愛菜、だろ?」



今度は私が目を見開く番だ。



< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop