夜桜と朧月
初雪が降ったのは、12月も半ばの頃だった。この地域にしては珍しく遅い初雪だ。



まだ生後三ヶ月なら雪なんて分からないよね、とは思いつつも、咲希と多希にしっかり防寒服を着せて、ひらひらと雪が舞う中、近くの公園へと味を運んだ。



少しでも多く、この子達に色んな風景を見せてあげたい。



春に舞う桜



夏に輝く海の水面



秋風に揺れる真っ赤な紅葉



冬に輝く一面に渡る銀世界



そして、いろんなイベントも。



お正月、節分、雛祭り……。


この子達と、これからも歩いていきたい。



でもそれは、お義兄さんが決めること。



もしお義兄さんが、誰か姉以外の女性を家庭に入れると決めるなら、私はこの子達の前から去らねばならない。



それは仕方がないことだろう。



もし、いつその日がきてもいいように。



私はこの子達に、出来る限りの【世界】を、みせてあげよう。


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