夜桜と朧月
高3になって、私が一流企業の営業職に就職が決まった時も、そして彼が進学の道を選んだ時も、まだ、二人で一緒の道は通じているものだと思っていた。
卒業式の日は、溶けるまで二人、抱き合った。
それが、実際は、私はと言えば入社に伴って覚えなければいけない業務内容や挨拶回り等で忙しくなっていたし、彼もまた、大学生としての付き合いに明け暮れていた。
会える時間はほとんどなくなっていき、電話やメールも少なくなっていった。
それでも、まだ、私は彼を想っていたのだ。
今は忙しくて会えないけれど、今度時間を見つけて会えない分の埋め合わせをしたいと。会えなかった分だけ、語り合いたいと。
それが最初に裏切られたのは二年ほど前、私達が高校を卒業して最初の夏だった。