夜桜と朧月
聖夜
Ⅰ
師走も押し迫った24日、クリスマス・イブ。
夜のパーティーの為に、朝から私はバタバタと駆け回っていた。
お義兄さんは、料理は惣菜屋やファストフードから買って来ようと申し出てくれたが、私はそれを断り、必死に自力で鶏肉と格闘していた。
鶏肉をオーブンに放り込んだ後は、ケーキの飾り付けが待ち構えている。
ケーキの上に乗せる果物はイチゴにした。これだと、潰して咲希と多希に汁を飲ませられるしね。
元来姉が料理好きだったので、必要な器具類は一通り揃っていたから、私は材料さえ買ってきて作れば良いだけの話。
あっ、マーメイドサラダを作らなきゃ。パプリカを乗せて、しっかりクリスマスカラーに。
わたわたして、漸く準備が整った時、丁度よくお義兄さんが帰ってきた。
今日は振り替え休日だったけれど、急な仕事が入って、仕方なく出社になったとの事だった。
「お疲れ様でしたー!」
ぱたぱたとスリッパを鳴らして、玄関先まで咲希と多希を抱っこしてお出迎え。
うっ、両手で二人抱えるのは重い……!
「いい匂いがするね。昼飯もまともに食ってないから、腹へったんだー」
ネクタイを緩めながら、足早にお義兄さんは寝室へ消えた。