夜桜と朧月
「椿……!お前ここ何ヵ月か、どこ行ってたんだよッ……!?」
赤坂君の声音には、ちょっと怒り成分が混じっているようだ。
なんで私が赤坂君に怒られなきゃいけないの?
「え…っと、ベビーシッターを頼まれて、仕事を辞めて、遠いとこに……」
藤崎は、心配そうに私を見てるし、赤坂君はと言えば、腹立たしげに舌打ちするし。
え?これなに?
「………楓が四ヶ月ぐらい前、必死でお前を探してたの知ってんのか?」
楓が?私を?
「ううん?全然」
だってほら、楓はアレだったもん。だから………。
「……確かに楓が悪い事をした。お前に対して。楓のあんな女関係が何年も続いてたんだから、お前が消えたくなるのも理解できる」
うーん……。私が去年の秋に引っ越したのは、楓が直接の原因ではないけれど……。
「けど、お前に連絡がつかなくなってからの楓は、滅茶苦茶必死だった。俺やコイツんとこ来て、スゲー泣きそうな顔で【真愛がいなくなった、俺のせいだ】って、物凄く後悔してた。あんだけ遊んでた女達も皆、あっさり捨ててた。お前の実家に行っても、居場所は教えて貰えねーし。あん時の楓は、見てるこっちが辛くなったよ」
「……そう、なんだ……」
楓が、そんなに私の事を思ってくれてたんだ……。
「楓はさ、変にプライド高いとこあって、執着心も半端ないけど、椿を一番に思う気持ちは、高校ん時も今も、ずっと変わってねーんだよ。だからさ、楓の事、許してやってくれよ。ホント、マジで頼むから」
赤坂君が、私に頭を下げたのに、私はそれに答えることは出来なかった。
「あたしも、マナに電話したけど、いつも出てくれなかったよね?それ、すごい寂しかったんだよ……?」
藤崎が、私と視線を合わせないように呟いた。
「その事は、ごめん。双子の新生児を預かってたから、とにかくバタバタしてて、毎日ホントに忙しかったの。メールチェックとかもできなかったし……。テレビも観る暇なんて無かったし、すごい疲れてて、アパートには寝るためだけに帰ってるようなもんで……」
実際、咲希と多希が新生児の時は物凄く精神的に張り詰めていた。
授乳は頻繁に行わなければならないし、肌着等の洗い物も大量にあったし、病気で高熱を出したら、二人を連れて病院に行ったりしたし……。
電話やメールのチェックをできていなかったのも、事実だ。
「……ごめんね、藤崎。でも、赤ちゃんを、しかも双子の新生児を預かった以上、遊び気分でお世話する訳にはいかなかったんだ。お世話するからには、ちゃんと責任もって育てないといけないとって思ったから、私の生活の全部、育児にかかりっきりになっちゃってた……」
膝の上で、手をぎゅっと組み合わせた。
赤坂君と藤崎には申し訳なくて、顔を上げれない。
赤坂君の声音には、ちょっと怒り成分が混じっているようだ。
なんで私が赤坂君に怒られなきゃいけないの?
「え…っと、ベビーシッターを頼まれて、仕事を辞めて、遠いとこに……」
藤崎は、心配そうに私を見てるし、赤坂君はと言えば、腹立たしげに舌打ちするし。
え?これなに?
「………楓が四ヶ月ぐらい前、必死でお前を探してたの知ってんのか?」
楓が?私を?
「ううん?全然」
だってほら、楓はアレだったもん。だから………。
「……確かに楓が悪い事をした。お前に対して。楓のあんな女関係が何年も続いてたんだから、お前が消えたくなるのも理解できる」
うーん……。私が去年の秋に引っ越したのは、楓が直接の原因ではないけれど……。
「けど、お前に連絡がつかなくなってからの楓は、滅茶苦茶必死だった。俺やコイツんとこ来て、スゲー泣きそうな顔で【真愛がいなくなった、俺のせいだ】って、物凄く後悔してた。あんだけ遊んでた女達も皆、あっさり捨ててた。お前の実家に行っても、居場所は教えて貰えねーし。あん時の楓は、見てるこっちが辛くなったよ」
「……そう、なんだ……」
楓が、そんなに私の事を思ってくれてたんだ……。
「楓はさ、変にプライド高いとこあって、執着心も半端ないけど、椿を一番に思う気持ちは、高校ん時も今も、ずっと変わってねーんだよ。だからさ、楓の事、許してやってくれよ。ホント、マジで頼むから」
赤坂君が、私に頭を下げたのに、私はそれに答えることは出来なかった。
「あたしも、マナに電話したけど、いつも出てくれなかったよね?それ、すごい寂しかったんだよ……?」
藤崎が、私と視線を合わせないように呟いた。
「その事は、ごめん。双子の新生児を預かってたから、とにかくバタバタしてて、毎日ホントに忙しかったの。メールチェックとかもできなかったし……。テレビも観る暇なんて無かったし、すごい疲れてて、アパートには寝るためだけに帰ってるようなもんで……」
実際、咲希と多希が新生児の時は物凄く精神的に張り詰めていた。
授乳は頻繁に行わなければならないし、肌着等の洗い物も大量にあったし、病気で高熱を出したら、二人を連れて病院に行ったりしたし……。
電話やメールのチェックをできていなかったのも、事実だ。
「……ごめんね、藤崎。でも、赤ちゃんを、しかも双子の新生児を預かった以上、遊び気分でお世話する訳にはいかなかったんだ。お世話するからには、ちゃんと責任もって育てないといけないとって思ったから、私の生活の全部、育児にかかりっきりになっちゃってた……」
膝の上で、手をぎゅっと組み合わせた。
赤坂君と藤崎には申し訳なくて、顔を上げれない。