夜桜と朧月
少し深呼吸をしたくて、上着を羽織って外に出た。
頭上を見上げれば、黒い空から綿毛のような雪が舞い落ちてくる。
延々と落ちてくる雪をただ無意識に眺めていると、夜の闇に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
夜の黒と雪の白は、決して混じり合うことはない。
目尻に落ちた雪が体温に溶かされて水滴となって流れ落ちる。
目を冷やすと偏頭痛がかなり和らいだようだった。
冷気に晒された耳たぶが痛い。ピアスを着けた箇所がジリジリと熱を持っている。
薫に着けてもらったピアス自体が熱を発し、全身に広がればいい。
冬の冷気に心身を冷やして無意識に任せていたら、手に持った携帯が鳴った。
相手を疑うことなく携帯を耳に持っていく。
「……薫?」
通話口の向こうからは、安心したような吐息が零れた。
『お前、昨日大丈夫だったのか?』
心配、するよね。いきなりあんな事言い出したんだから。
「大丈夫。あの電話切った後、すぐ帰ったから」
『ちゃんと帰れたのか?』
そんなに深酒した訳じゃないから、薫が心配してるような事は何もないのに。
「ふふ。ご安心ー。誰にもナンパされませんでしたー。残念」
『なんだよ、それ』
不貞腐れた薫の顔が目に浮かぶ。
『昨日何かあったのか?』
その問いは、今の私には苦痛でしか無い。だから私は、それには答えられないのだ。
「……皆に会いたくなっただけ。寂しいの」
それは嘘偽りない純粋な私の気持ち。
あなた達に、早く会いたい。
頭上を見上げれば、黒い空から綿毛のような雪が舞い落ちてくる。
延々と落ちてくる雪をただ無意識に眺めていると、夜の闇に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
夜の黒と雪の白は、決して混じり合うことはない。
目尻に落ちた雪が体温に溶かされて水滴となって流れ落ちる。
目を冷やすと偏頭痛がかなり和らいだようだった。
冷気に晒された耳たぶが痛い。ピアスを着けた箇所がジリジリと熱を持っている。
薫に着けてもらったピアス自体が熱を発し、全身に広がればいい。
冬の冷気に心身を冷やして無意識に任せていたら、手に持った携帯が鳴った。
相手を疑うことなく携帯を耳に持っていく。
「……薫?」
通話口の向こうからは、安心したような吐息が零れた。
『お前、昨日大丈夫だったのか?』
心配、するよね。いきなりあんな事言い出したんだから。
「大丈夫。あの電話切った後、すぐ帰ったから」
『ちゃんと帰れたのか?』
そんなに深酒した訳じゃないから、薫が心配してるような事は何もないのに。
「ふふ。ご安心ー。誰にもナンパされませんでしたー。残念」
『なんだよ、それ』
不貞腐れた薫の顔が目に浮かぶ。
『昨日何かあったのか?』
その問いは、今の私には苦痛でしか無い。だから私は、それには答えられないのだ。
「……皆に会いたくなっただけ。寂しいの」
それは嘘偽りない純粋な私の気持ち。
あなた達に、早く会いたい。