夜桜と朧月
元旦からレンタルショップでホラー物と恋愛物を借りられるだけ借りてきて、二日間ずったり観ていた。



チヒロや藤崎から初詣に行こうと誘われたが、今は高校の時の友人達に会うのが怖くて仕方がない。



彼等に会ってしまえば、嫌でも楓の事を思い出すから。


楓の事は、彼が言った「桜が咲く頃」に、ケジメをつけるつもりでいる。






あの箱の包みを解く気は、毛頭、ない。




待ちに待った3日の朝。前日に降った雪は薄らとつもり、街に薄化粧を施していた。


もっと積もってたら、咲希と多希が来る前に雪だるまを作ってあげられたのに。残念。



お昼頃、家の車庫に薫の白いワゴン車が入った時は、待ちきれなくて思わず外に飛び出した。


けれど、溶けてぬかるんだ雪に足を滑らせて転んでしまったけど。



車のドアを開けて、まず咲希をベビーシートから抱き上げた。



ちょっと見ない間に、少し大きくなったようだ。抱っこした時の重さが若干違うから。



多希は助手席から、薫に抱き上げられていた。二人とも車の中に長時間いたせいか、ぐっすり眠っている。

昼間こんなに寝てたら、この子達、夜絶対寝ないよね。



「二人ともずっと車で寝てた?」


薫に聞いたら「ああ」と素っ気なく言っただけで、多希と荷物を抱えてさっさと家に向かってしまった。……え?……なんで?

呆然として咲希を横抱きにしてその後を追った。あれ?私何かした……?

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