夜桜と朧月
Ⅱ
恐る恐る薫の方を見てみれば、怖いぐらいに無表情で私を見返す黒い瞳と視線が絡まった。
疚しい気持ちが一つも無いと言えば、嘘になる。
だから、この際自分がスッキリするために、薫には全てを打ち明けようと決意した。
「あの、さ…。お父さんが言ってた楓って人なんだけど」
「うん」
先刻までの酔いはどこへやら、薫の表情からは何も感情が読み取れない。
「元カレ、だと私は思ってた。……ちゃんと別れたわけじゃなかったけど……」
「思ってた、それで?」
「けど、向こうはまだ私に未練……っていうか、またやり直したいみたいで……」
飲み会で、赤坂君から伝えられた楓の気持ち。
それらを纏めて一言一言を言葉にするのが難しい私のこの感情は、薫に上手く伝わるだろうか?
「うん、そして?」
「でも、私はもう楓とは別れたい。楓の浮気が酷かった、のもあるけど……」
「……あるけど?」
二番目でも良いぐらい、薫の事が、好きだから。
「薫を好きになってしまったから。もう、楓には戻れない」
「……お前は、それでいいの?」
どうしよう。
疚しい気持ちが一つも無いと言えば、嘘になる。
だから、この際自分がスッキリするために、薫には全てを打ち明けようと決意した。
「あの、さ…。お父さんが言ってた楓って人なんだけど」
「うん」
先刻までの酔いはどこへやら、薫の表情からは何も感情が読み取れない。
「元カレ、だと私は思ってた。……ちゃんと別れたわけじゃなかったけど……」
「思ってた、それで?」
「けど、向こうはまだ私に未練……っていうか、またやり直したいみたいで……」
飲み会で、赤坂君から伝えられた楓の気持ち。
それらを纏めて一言一言を言葉にするのが難しい私のこの感情は、薫に上手く伝わるだろうか?
「うん、そして?」
「でも、私はもう楓とは別れたい。楓の浮気が酷かった、のもあるけど……」
「……あるけど?」
二番目でも良いぐらい、薫の事が、好きだから。
「薫を好きになってしまったから。もう、楓には戻れない」
「……お前は、それでいいの?」
どうしよう。