夜桜と朧月

まだ、薫は私の気持ち、信じてくれないのかな。心の中で色んな言葉は溢れてるのに、薫に信じて貰えるような言葉はどれなのか、探しても、見つからない。



「……浮気相手の女の子達に、メールで嫌がらせとかいっぱいされた」

「……嫌がらせ？」

「……ヤっ…てる時の写真添付して、朝から送られたてきたり、とか……その日行く予定の、ホテル……の、名前と時間……とか、一方的に……」



疑われないように、疚しさを見せないように、笑いながら話してた筈なのに、いつの間にか涙腺は弛み、涙が滴り頬を濡らす。



「もういい。思い出すな」


私を胸に抱き寄せた薫が、どんな顔をしていたのかは分からない。


けれど、一旦溢れ出てしまった言葉は留まる事なく流れてしまう。


「 ……もう、恋愛なんっ…か、したくないって、毎日辛くて、でもっ、…だんだん心が冷えてっ……いって」

「……辛かったろ……？」

頭を撫でる薫の手から、やんわりと熱が伝わってくる。


こうやって薫は私の心を溶かしてくれるんだ。


「でも、薫を……男の人として見るように、なってから、またドキドキする……気持ち、に気付いて…」

「俺を見てドキドキすんの？」


薫の胸の中でこくこくと頷く。


「だから、今は……私も、薫がいないとっ……。やだ……！」


とうとう言葉は尽きて嗚咽が漏れた。

さっきより強く薫に抱き締められた。