夜桜と朧月
それなのに父は「薫君、抱っこさせてくれんかね!?」と、目尻どころか鼻の下まで伸ばしてすっかり弛んでいる。

ああもう、オムツだって替えなきゃいけないんだから邪魔だっつーの!!




その後、酔っ払いのくせに「酔ってない!」と駄々をこねた父が咲希達と一緒にお風呂に入りたがったのを、薫と私が慌てて止めたり、まだ食べれないのにお寿司の上に乗っているイクラを食べさせようとしたり散々冷や冷やさせられた。



父と咲希達がようやく寝たのは夜も11時を過ぎてからで、私はと言えば、年末年始からの家事と来客の接待でクタクタに疲れていた。


長湯で疲れを癒して居間に戻ると、薫が所在無げにテレビのリモコンで遊んでいる。



「何か面白い番組やってる?」


とは聞いたものの、正月三ヶ日なんてどこも同じような感じだろう。


「なんもない」


ポイ、とリモコンを放り投げた薫に、いきなり腕を掴まれて抱き締められた。



そのまま、寝間着替わりのパーカーのファスナーを下ろされ、鎖骨を舌で舐められると、我慢できずに声が漏れる。


「やっ……ちょっと……!」


ここ実家!奥でお父さん寝てるし!


「客間行こ?」

「明日で良いでしょ!」


小声で囁いてみるけれど、いつ父が起きるとも分からない。


それなのに、薫は半ば引き摺るように私を拉致してしまった。有り得ない!!

「いいじゃんヒメハジメ。年末からずっと我慢してたんだけど、俺」


胸はもうすっかり晒し出されて、良い様にまさぐられている。


私が一番感じる所なんて薫にはとっくに知り尽くされていて、重点的に揉まれたり舐められたり。それだけでも一杯一杯なのに、薫の頭は更に下に沈んだ。

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